羽子板は押絵でイメージが変わる
現代では子ども達が羽子板をついて遊ぶ姿はお正月であってもなかなか見られなくなりました。ですが、羽子板は伝統的な日本の遊びであり、こうした遊びがあったという歴史は知っておいて欲しいと思います。
羽子板を使った羽根つき遊びは平安時代に行われていた遊びから始まったとされています。その時代から書物や巻絵などにも登場することがありました。毬杖と呼ばれていたものですが、そこ頃から木製の板を使っ毬を打つという遊びだったようです。
そこからさらに進化して羽根のついたものを打つという形になっていくわけですが、これは中国から伝来した遊びが大きく影響しているとされています。
日本の伝統の遊びや行事も、このように近隣のアジアの国からの影響を多く受けているので、ところどころ隣国とのつながりを感じることもできるでしょう。
また羽子板を使った羽根つき遊びは魔よけの儀式の意味もありますから、お正月に羽根つき遊びをして魔よけをする、という意味もあります。現代ではほとんど羽根つき遊びをすることはなくなりましたが、魔よけの意味で羽子板を飾っておくことは、一年の始まりとしてふさわしいこととも言えるでしょう。
そのつながりで、羽子板を子どもの節句の飾り物として飾っておく家庭も多く、飾って楽しむという流れにもなっていったのでしょう。
もともとは遊ぶ目的の羽子板でしたが、江戸時代にもなるとすでに遊びで使うよりも祭礼で使用する目的の方が多くなったので、目にしたことのある羽子板というのはとても豪華で華やかなものが多いでしょう。
縁起物として飾るのが一般的になっているので、装飾も流行や人気のものが多く飾られるようになっています。また、派手で豪華な飾りものを付けた羽子板というのはとても多く販売されていますが、同じく江戸時代から多く普及されるようになったのが押絵の羽子板です。
江戸時代になってくると、昔は貴族だけが持つものであった高価な羽子板も、ごくごく普通の一般庶民も多く持たれるようになったので、羽子板をもっと自由に楽しむようにもなり、押絵の羽子板が人気を得るようにもなりました。江戸時代はまだ今のようにブロマイドや綺麗な写真などもありませんでしたから、歌舞伎役者をイメージした押絵の羽子板が人気になったようです。今でいう人気アイドルのグッズのようなものなので、そうした人気に便乗した遊び心のある羽子板はよく売れたのではないかと考えられています。
押絵羽子板はとても立体的でまるで日本人形のようです。布でくるんだり、さらに立体的な絵柄に仕上げてあるので、とても圧倒されます。まだに押絵の技法を羽子板に取り入れたものなので、そのリアルさも見ごたえがあります。豪華な押絵と人気歌舞伎役者のコラボは当時の人々を喜ばせるものでもあったでしょう。徐々に歌舞伎役者だけでなくお芝居、人気の人なども押絵で描かれるようになっていったので、そうした自由に描くことができるというのが受け入れやすくもあったでしょう。流行に対応していかなかったり、ずっと古いままでは徐々に時代にそぐわないものとして排除されたり、いつしか消えていくことも多いので、今の時代にも飾ることが多い羽子板は時代に柔軟に対応してきた伝統品でもあるでしょう。
特に今はお正月になっても派手派手しい飾りなどあまりしなくなりましたから、羽子板も子どもが生まれた時のお守り、節句の日の魔よけとして飾ることのほうが多くなってきているこのです。特に羽子板はその形から末広がりの縁起物と考えられ、女の子の健康と安全を願い、魔よけの意味が込められて贈られることも多いです。今風にアレンジされとても可愛い飾りが付けられている羽子板ばかりなので、羽子板と聞いて昔の古いイメージを想像しなくても大丈夫です。ひな祭りの人形と同じでモダンで洗礼されたデザインのものがたくさんあり、そのバリエーションの豊富さに驚くこともあります。羽子板はひな人形やその他の飾りがあれば必要ない、と思うかもしれませんが、どのようにして伝わってきたか、また魔よけの意味もあり単なる飾り物ではないということを知れば、興味もわいてくるでしょう。
通販などでは名前入りの羽子板も受け付けていますから、子どもが誕生した時にオーダーするのも良いです。美しい羽子板はガラスケースなどに入れてずっと飾っておくことができますし、その子を守るためだけではなく、家のインテリアとしても華やかにしてくれます。今は押絵だけではなくつまみ細工などを多く取り入れた羽子板も人気です。誕生花や誕生石などをつけてさらにその子にちなんだ羽子板にしてみても良いでしょう。自由に楽しむ心を取り入れながら飾り方を変化させてきた羽子板ですから、飾り方も飾りの選び方も自由にできるのが魅力です。自分の個性を大事にしたい今の風潮にもあっているでしょう。